デリムの活用

デリムの活用は、デリムセラピストとしての意識や技能を通じ、将来への活躍に関わってくる事柄です。

手技への自信


セラピストの中には「いつも同じ手技ばかりだとお客様が飽きてしまう」という不安を感じる人がいます。もっとコリをほぐせる技、新しい別の技はないのだろうかと。

自分を研き、成長することは大切ですが、技の多さだけがその裏付けとは限りません。基本の揉みを何度も反復継続し、その応用を試みることも成長です。

反復は手技の精度(精密さ)を、継続は手技の練度(熟練さ)を増します。昨日までと同じ揉みに、ある日ふと新たな感触や、思わぬ発見を抱くこともあります。

シンプルでスタンダードであるからこそ、デリムの基本の手技を大切にし、自信をもって使い続けてください。あらゆる応用は、全て基本の中にあると言っても過言ではありません。

今できる範囲での手技を、しっかり行うという自信で十分です。

不安に駆られその自信が持てない様では、ゲストの信頼も到底得られません。

デリムの活用

未経験者にとってデリムの習得は比較的容易で、短期間に驚くほど高い効果を身につけることができます。

ところが経験者の場合は逆に習得が難しく、かなり時間がかかるケースが見られます。

「ゆっくりと圧を入れて、それを徐々に弛めていく」ことなど造作もないはずなのに、整体的なほぐし揉みのリズムや手技が癖になっていて、直すのに苦労するのです。

私もわずか3か月に満たない整体もみの癖を直すのに、倍以上の期間を要しました。日々行う施術のつど注意深く加え圧と抜き圧を意識し、自ずとデリムの揉み方を身につけるのに半年以上かかりました。

何年もほぐし揉みに取り組んできたセラピストが一朝一夕でデリムを行うのは至難といえます。

ほぐし揉みのメリットを捨ててまでデリムにこだわる必要はありません。手慣れた技はそのまま使い、首や肩などの特定の箇所、あるいは肘や横揉みなどに利用できる技術としてデリムを取り入れてください。

ゆったりとした加え圧の「スローリー・プッシュ(Slowly push)」や、徐々に深く圧を入れていく「ディープ・プレス(Deep press)」といったテクニックは、整体揉みに活かすことができます。

メソッドの優劣


リラクゼーションのメソッドにはそれぞれ特徴があります。

本サイトはデリムの特徴や素晴らしさをアピールする目的なので、ともすれば整体的なほぐし揉みがデリムよりも劣っている印象を与えてしまうかも知れません。

しかし、身体をほぐす技術にかけて整体揉みの熟練者にかなう人はいません。

メソッド本来の特徴、長所・短所というものは確かに在ります。しかしセラピストとしての最終的な実力と技能の程度は、メソッドの優劣よりも多分にセラピスト当人の個人的な要素で左右されます。

たとえば、もし実際に戦って柔道と空手のどちちが強いかは、互いの選手が自分の力と技をどれだけ極めているかによって勝負のアヤは異なるのです。

他のメソッドを批判するセラピストであってはなりません。

謙虚に、そして柔軟に、他のメソッドの良さを認めながらも、自分が志すデリムを高めていく姿勢がのぞまれます。

ビューティフル・ポスチャー


デリムのセラピスト志向を示す提言の一つとして、「美しい姿勢(Beautiful posture)」が上げられます。

首や肩に余計な力を入れず身体をリラックスさせ、背中や腰や肘が必要以上に曲がったり、圧の抜き入れが窮屈であってはなりません。

ビューティフル・ポスチャーには、デリムは女性セラピストには特にそうあって欲しいという願いがあります。

施術時の美しい姿勢は、動きにも無駄がありません。少ない腰の動きで重心を乗せることができ、微妙な力加減をコントロールできます。美しい姿勢はまた、セラピストの疲労と故障を軽減させる姿勢ともいえます。

リラックス


ゆったりとしたデリムの加え圧と抜き圧を行う上で大切なことが二つあります。一つはセラピストの意識、そしてもう一つはセラピストの呼吸です。

意識に関しては自分の気持ちを楽にし、穏やかな心で圧をコントロールすることを心がけます。セラピストが緊張すると身体との接点(手、指、肘など)を通じてクライアントに伝わります。

自分がまずリラックスしないと、クライアントをリラックスさせることは難しいといえます。

ファーストデリムという施術開始時のルーティンがありますが、実はその目的を果たすことを一つの狙いにしています。

リラックスを間接的にもたらすものに音、光、香りなどの作用があります。それぞれ聴覚、視覚、嗅覚に関わり、気持ちをゆったりさせるBGM(音楽)、落ち着いた雰囲気の照明、アロマやハーブなどの香料はその代表です。

このような外部からの間接的な作用が得られなくても、自分の意識と呼吸によって、いち早く自身をリラックスさせます。

デリバレイト・マッサージは直接クライアントの身体に触れる作用です。その身体感覚(触覚)は、音や光、香りなどによるリラックスをはるかに上回ります。

呼吸との調和


デリムにおいて呼吸はとても重要なファクターです。施術中は複式呼吸を心がけ、鼻からゆっくりと吸って口から緩やかに吐きます。腹式呼吸は副交感神経の働きを助けることからセラピストをリラックスさせる効果もあります。

呼吸はデリムの圧と密接に結びついています。加え圧に合わせてゆっくり息を吐き、抜き圧に合わせてゆっくりと息を吸います。

圧と呼吸がうまく調和することにより、心地よいデリムのリズムが生まれます。

疲れにくい施術とは、その姿勢と共に、呼吸と強く関わっています。

力を入れるときに思わず息を止めてしまうと、その瞬間に首や肩に余分な力が入り、指先だけの力で圧を込めている施術になりがちです。

息を吐く動作は自分の腰、つまりは重心を楽に乗せるための動作でもあるのです。

呼吸との調和した圧の抜き入れは、いつしかクライアントにも伝播します。

気が付けばデリムの圧に合わせて、クライアントもゆっくりと呼吸するようになるでしょう。寝てしまう方も少なくありません。

ストレッチとの相性


加え圧と抜き圧を重視するデリムとの相性が抜群なのが「静的ストレッチ」です。

略語のデリエム(Deli-M)からデリムと名付けましたので、デリバレイト・ストレッチ(Deliberate Stretch:Deli-S)のデリエスならデリスとなります。

デリムは元来がゆったりとしたリズムで手技を施すことから、そのストレッチは、整体もみのセラピストが行なうものより、さらにゆったりと、じんわりと部位を伸ばします。

クライアントの関節の可動域や筋肉の伸び具合を探るには、加え圧と同じ要領で、ゆっくりと部位を伸ばせなくてはなりません。

そしてこれ以上は伸ばせない、さらに伸ばすと痛みに転じるというPポイントの手前で抜き圧と同じ要領でゆるめるのです。

ごく初歩的なストレッチで十分です。基本に忠実に、ゆっくりと、なめらかに、またしっかりとストレッチするように心がけてください。

デリムセラピストは必ずやストレッチの名手にもなれるはずです。