セラピストにとってのデリム

デリムはセラピストに自信と恩恵をもたらすスペシャリティメソッドです。セラピストへのデリムの恩恵を紹介します。

弱揉みができる

デリムの揉みほぐしでは、リズムと深度の弱い圧から入り、クライアントの身体の反発や抵抗に応じてゆっくりと力を加えていく「加え圧」と、その逆の「抜き圧」を行います。

この意図的な圧の抜き入れをDプレス(Deliberate Press)と呼びます。デリムによって得られるメリットの多くは、このDプレスによるものです。

体幹へのDプレスは通常4拍-4拍のタイミングで行いますが、慣れてくると最短では1で圧をかけ、次の2で抜くという1拍-1拍も苦になりません。圧の抜き入れが弱くてもきちんとこなせる。それは「弱揉み」ができることを意味します。

強揉みはそれほど苦手にしないが弱揉みは苦手、というセラピストは少なくありません。できなくはないが圧の抜き入れに神経を使い、重心を乗せきれないことから強揉み以上に疲れを感じる方も多いようです。

また弱揉みに不慣れだと不安から力を込めきれず、クライアントにあまり気持ち良さを与えることができません。デリムでは弱くても意図的に1の圧をかけているので、相応に満足してもらえます。

深揉みができる

それ以上力を加えるとクライアントが痛いと感じる圧の限度を「痛達点(Pain Breakpoint)」、略してPポイントと呼びます。DプレスにはこのPポイントをより深める効果があります。

たとえば4の力を不規則にギュッと入れると痛いと感じるケースでも、それを意図的に1からゆっくり入れていくことで、同じ4に達してもクライアントはそれほど痛いとは感じないのです。

テンポがゆっくりな「加え圧」であるほどPポイントは増し、5どころか6の強さでもあまり痛みを感じさせません。これが「深揉み」です。それにより3や4の圧は「少し痛いけれども気持ちいい」状態に変わります。

Pポイントの手前で「抜き圧」に転じることでクライアントの身体への優しさと気持ちよさが増します。デリムは強く揉んでも「揉み返し」が生じにくい理由はここにあります。

力加減が分かる

セラピストの多くが揉みほぐしに抱く永遠の課題。それは「力加減(Force acceleration)」ではないでしょうか?。通常は経験でそれをカバーします。相手の職業や疲れの原因をさりげなくヒアリングして判断に加えるベテランもいます。

しかしクライアントの体調や心理、硬さ、コリ具合やほぐれ具合、さらには部位により、適切な力加減は施術中ですら変化していきます。それを測る最も確実で妥当な方法は、やはり自分の手技を通じて直接相手の身体から察知するほかありません。

不規則な圧では難しく、規則的な圧でも多分に経験を要します。力加減を測るためにはDプレスが最も効果的です。意図的にゆっくり入れなければ揉んでいる箇所からの微妙な反応や抵抗は分からないのです。この「力加減が分かる」ようになってくると、セラピストとして大きな自信を持つことができます。

どこでも揉める

デリムによって弱揉みや深揉みができ、力加減が分かってくると、決して大げさではなく、身体のあらゆる部位を揉めるようになります。普通ならタブーとされるたとえば骨、関節、筋(スジ)、眼球、喉、耳、男性器、乳房ですら揉めなくはありません。実際にそれらを揉むことはありませんが「どこでも揉める」のは自信になります。

デリムに熟練すると、いつも行う1拍の圧をさらに何等分かの1にしたDプレスもできるようになります。それは触診に近いもので、クライアントの身体を痛めないよう優しく注意深く圧を徐々に入れていき、Pポイントの手前でゆっくり圧を弛めていきます。

ゆっくりとした加え圧に慣れ、力を入れてもここまでなら大丈夫ということが分かってくると、圧への不安や恐れがなくなります。太ももの裏やふくらはぎ、腕の背面、腹腔など、身体でも特に柔らかい部位でもきちんと圧を入れられるようになります。

どこでも揉めるという安心感は、クライアントの体位や姿勢にも通じます。うつ伏せや仰向けは勿論のこと、自然なスタイルの座位や立位、横向きでもデリムは苦手としません。

誰にでも揉める

どこでも揉める自信が長じると、さらに「誰にでも揉める」という感覚を持ち得ます。程度の差はありますが、実際に下は小学生の子どもから、上は90歳を超える高齢者まで揉めます。

腰が曲がった小柄な老人、かなり痩せた若い女性、筋肉質の男性。肥満で大柄の中高年など、ほぐし揉みでは、ほぐしにくい相手への苦手意識が芽生えることもあります。

いやし揉みのデリムでは、クライアントの体質や体型などの影響をあまり受けません。気にならない、といえるでしょう。

ただし高発熱、重度の糖尿病や骨粗鬆症、潰瘍性疾患、皮膚疾患、静脈瘤やリンパ腫など、揉みほぐしで一般に施術禁止とする事由の対象者を除くのは同じです。妊婦は安定期に入っていれば問題ありません。

デリムの特徴Ⅱ

セラピストにとってのデリムをまとめます。

セラピストにとって
  1. 苦手意識をそれほど持たずに「弱揉み」ができるようになります。
  2. 通常なら痛いと感じさせる限度を越えた「深揉み」ができるようになります。
  3. 力加減が分かるようになることでセラピストとしての自信を持つことができます。
  4. クライアントの身体の様々な部位を揉めるようになります。
  5. クライアントの体位や姿勢にあまり影響を受けません。
  6. クライアントの体質や体型にあまり影響を受けません。