デリムのテクニック

心地よい圧とはどういうものなのでしょうか? デリムは「圧」への意識と動作を大切にします。

デリムの圧

デリムの最大の特徴は、クライアントの身体に対してゆっくりと力を加え、そしてゆっくりと弛めていく技法にあります。もみほぐしにおいてこの力は「」を意味します。

圧を加えることを加圧(かあつ)、弛めることを減圧(げんあつ)と言うと、あまりにもイメージが機械的でリラクゼーションに馴染みません。

そこでデリムでは、加え圧(くわえあつ)、抜き圧(ぬきあつ)とそのまま呼ぶことにしています。

揉みほぐしでは一般に加え圧が重視され、抜き圧はほとんど注目されません。デリムでは加え圧はもちろんですが、抜き圧を重視します。

圧の3要素

やや専門的な難しい話になりますが、1つの「圧」は、長さと深さ、向きという3つの要素によって成り立っています。

圧の長さは力を入れる時間として捉えることができ、リズムとして表すこともできます。深さはどれだけ押し込むかという深度で、向きは力を入れる方向、つまりは角度を表します。

瞬間に力を入れる時には1拍ですが、段階的に力を入れて行く時には、通常で2拍~4拍に圧が連続します。早いテンポの整体揉みは2拍、デリムは通常4拍です。

力をどう裁くかという観点で圧を捉えると、決して押し(圧迫)のみの考え方ではないことに注意します。揉みや叩き、擦り、伸ばしにも圧の3要素は関係します。ストレッチの場合は、深度をどれだけ伸ばすかという「伸度」に置き換えると分かりやすいでしょう。

圧の3要素は、もみほぐしマッサージの全てに関係します。

不規則な圧

クライアントの身体に圧をかける場合、ただ力を入れる、やみくもに押すという観念だけでは「不規則な圧(Irregular push)」になりかねません。不規則な圧とは、下図に示すようなものです。

他との比較で、図はリズムと深度を等分に示していますが、実際は1拍のリズムで2拍分の深度であったり、逆に2拍のリズムで1拍分の深度という状況も往々にあり得ます。

この圧では加え圧がほとんど意識されないことから、抜き圧はさらに意識されません。一般に圧をかけた後はすぐに力が抜けることが多く、余韻がないので皮膚や筋肉への感触が弱くなります。「とにかくお客様が満足する様に力を入れて押しなさい」という教え方しかされないとこの圧が身についてしまいます。

不規則な圧は経験の浅い初心者だけではなく、経験者であっても力任せでギューギュー押すタイプのセラピストによく見られます。

ツボやコリをきちんと押せていればまだ大丈夫ですが、加え圧がバラバラなことから、ほぐすことはできてもクライアントに気持ちよさを感じさせることが難しい揉み方になります。

規則的な圧

不規則な圧と比べて、リズムと深度に一定の相関性を有するものが「規則的な圧(Regular push)」です。規則的な圧とは、下図のようなものです。

他との比較で、一つの圧のリズムと深度は等分に示していますが、実際は1のリズムで2の深度であったりします。不規則な圧との違いは、セラピストまたは個別の手技において、リズムと深度にほぼ一定のパターンが見られることです。

加え圧が意識されていると、抜き圧への意識が仮になくても近い結果をもらたします。呼吸と同じように、力の抜き入れに相関性が働くからです。ただし稀に、不規則な圧と同じ様にすぐに力を抜く人もいます。

クライアントから好評価を得るセラピストは、ほぼ例外なく規則的な圧を施すことができます。ほぐし揉みのベテランですと、ほぐせて、しかも気持ちよい揉み方になります。

意図的な圧

デリバレイトが意味する「意図的な圧(Deliberate press)」とは、加え圧だけでなく抜き圧までも意識し、ゆっくり力を入れて徐々に弛めていく揉み方です。意図的な圧のモデルを示すと、下図のとおりです。

図で一つの圧のリズムと深度は等分に示していますが、実際もほぼそのとおりです。1拍のリズムには1の深度を合わせることにより圧のコントロール、すなわち力加減が容易になります。

圧の加えはじめの時点ですでに抜き圧まで意識することにより、デリケートに優しく揉むことができます。身体の感触や反応を察知しやすく、スジやコリも見つけやすくなります。

意図的な圧は頭文字をとってDプレスと呼ばれます。デリムは全般にこの圧で施術を行うため、整体揉みに慣れているクライアントには全く違った揉みの印象を与えることがあります。